事業会社マーケターのさんぽ道

事業会社のマーケッターがメディアやブランディングについて寄り道散歩。

『ネットで生保を売ろう!』から学ぶライフネット生命保険のマーケティング手法

「何度も読みたい」と思える書籍との出会いは格別です。

「とにかく、タマを打ち続ける。これしか、僕らには手がなかった」

ライフネット生命保険岩瀬大輔副社長は著書『ネットで生保を売ろう!』でこう述懐しています。同社は出口治明社長と同氏が立ち上げたネット生保の雄。各種メディアを通じて、同社やお二方の活躍を見たことがある方も多いかと思います。

同著の中で自分が一番関心を持ったのが冒頭の発言内容、同社のマーケティング手法についてです。今でこそ認知度や知名度がある同社ですが、創設後はどのようにして同社の理念を一人でも多くの人に正しく知ってもらうかについて試行錯誤していたとのこと。

同社はネット専業の生命保険会社ですが、Web至上主義を捨て、広告やPR、イベント、チラシの配布など、あらゆる手を尽くして、ユーザーに対する認知度の向上を図ってきました。今に至るまでに経験した失敗は数多く、決して順風満帆な道のりを歩んでこなかったことが、同著からは伝わってきます。 

それでも、さまざまな失敗を通じて改善を図ってきた各種マーケティング活動が奏功し、現在の立ち位置を確立しました。「生保の広告なんて見たくない」というユーザーを相手にするには、生保そのものではなく、同社の理念や物語を伝えていくことに注力したそうです。

出口社長は外部からの依頼があれば、どこにでも行脚することで有名です。「ハトが選んだ生命保険に入る」(デイリーポータルZ)のコンテンツをご覧になっていただければ分かると思いますが、こういった企画にも出口社長自ら出演します。ライフネット生命保険という企業のあり方や出口社長自身のキャラクターが伝わってきます。こういうコンテンツを見たら、この会社に興味が湧きませんか。少なくとも自分はこの会社のことについてもっと知りたいと思ってしまいました。

また岩瀬副社長はご自身のブログ「発信し続ける理由」の中で、マーケティングの在り方についてこう述べています。

ニーズが顕在化する前から顧客と接触を重ね、人となりを知ってもらうことは、いわば営業活動の基本といってもよい。そのために我々は、生命保険のコンテン ツだけでなく、直接関係ないようにも見えるタイミングや場面で、接触をするようにする。

出口社長、そして岩瀬副社長自らが「個人メディア」となり、執筆活動やイベント出演を通じて、生命保険に興味・関心がなかったユーザーにライフネット生命保険を知ってもらう。打ち出した無数のタマが点となり、それがやがて線となってつながっていく。同著からは、ネットを活用したマーケティングコミュニケーションの正攻法をうかがい知ることができます。

私自身のこれからの仕事のあり方や方向性を考える上で、同社のマーケティングコミュニケーション、コンテンツマーケティングの手法は大変参考になります。コンテンツ作成能力に加え、会社の理念や考え方をユーザーに知ってもらうために、手法を問わず、物語や理念を語ることの重要性を認識しました。

 

ネットで生保を売ろう!

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