事業会社マーケターのさんぽ道

事業会社のマーケッターがメディアやブランディングについて寄り道散歩。

デザインはすべてのビジネスユーザーのもの

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2011年11月6日(日)。

デザインはビジネスの成否を左右する大きな要素です。どれだけいいサービスでも、その良さがユーザーに伝わらなければそっぽを向かれて日の目を見ることはないし、いざ使ってもらえるようになったとして、気の抜けたデザインや使い勝手が悪いユーザービリティはすぐに嗅ぎ分けられます。ユーザーの目は日に日にシビアになり、洗練されていないサービスは見向きもされなくなるかな、とさえ思います。

実体験としても語れます。とあるiPhoneアプリを使おうと、アプリをダウンロードしました。しかし、iPhoneアプリ単体では使えず、Webサイト経由でサービスに申し込んで初めてアプリが使えるとのこと。仕方ないなとWebサイトに訪れるも、申し込みをするのはどのリンクを踏めばいいのかが分からない。「iPhoneアプリはこちら」という表示を見てみたものの、申し込み画面の詳細が書いているだけで、肝心の申し込みができない……。

実際に申し込みができるのは、その詳細な内容が書いてあるコンテンツのテキストリンクをクリックした先にありました。「サービスを申し込みたい」というニーズが既にあるにもかかわらず、そのニーズをすぐに満たしてくれない……。ユーザー目線を欠いたサイトには、がっかりとさせられるばかりです。ユーザーのことを考えているのなら、申し込みサイトへの導線はファーストビューのどこかにあるべきだし、ボタンやバッジで目立たせてもいいくらい。「わざわざサイトに来てくれたのだから、探してよ」という怠惰な姿勢をくみとってあげられるほど、ユーザーは暇ではありません。

デザインの工夫やユーザービリティへの配慮1つで、そのサービスや企業ブランドのとらえ方が大きく変化するといっても過言ではありません。「あ、このサイト/サービスは使えないな」というレッテルをユーザーが貼ってしまうと、それを剥がすのは並大抵のことではありません。価格や機能の差別化でモノが売れた時代はとうの昔。今は、これらの要素に加え、デザインやユーザービリティが他者製品との差別化要因になりえます。AppleSamsungの製品に対するグランドデザインのこだわりを見るにつけ、デザインはマーケティングの一環であり、ビジネス戦略と密接に紐づいているのだということを、日々感じざるを得ません。

これは『デザインセンスを身につける』を読むことで、確信に変わりました。デザインはマーケティング、そしてビジネスの戦略と密接に関連しており、デザインは単なる見栄えではなく、その企業のビジョンやアイデンティティを体現したものであり、考え方や意思が備わっているというもの。1つ1つのデザインには意味や考え、込められた思いがあり、ユーザーはそれを体験することで、ブランドをより身近に感じるようになります

実は、今の仕事をするまで、デザインはセンスに立脚するものだと思い込んでいました。でも、実際にWebページなどのデザインを作る上で一番大事なのはセンスではなく、そのWebページを作ることでユーザーにどんな価値を提供したいかという芯の部分を考え抜くことだということが分かりました。

今ランディングページを幾つか作っているのですが、単にメッセージとビジュアルを決めて、コンテンツを当て込んでも、ユーザーに価値を提供できるサイトにはならないことを痛感する毎日です。何のためのサイトなのか、どういったトーン&マナーでユーザーにどういった印象を与えたいのかをシンプルな文章に落としこんで、デザインを発注しています。そうやって紡ぎ出した言葉によってのみ、意味を持つデザインが出来上がります。

『デザインセンスを身につける』から学べることは、すべてのビジネスユーザーにとってデザインの素養が必要とされていること。なぜなら、デザインはビジネス戦略を体現する要素だから。デザインはセンスや才能によってではなく、思考と言葉によってかたどられるものだということを強く認識できました。