ココ・シャネルの教養論、専門知識の最速習得法、エリートだってちょぼちょぼ
本の「使い方」 1万冊を血肉にした方法 (角川oneテーマ21)
- 作者: 出口治明
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2014/09/12
- メディア: Kindle版
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出口治明さんの『本の使い方』を読んだ。個人的に、出口治明さんの書く書籍はほとんど読んでいる。シンプルに、分かりやすい言葉で本質を突く。そんな内容が多い。サクッと読めてしまう割に心に残るものが多く、別の本で言及されていた「マネージャーやリーダーはメンバーに100点を求めてはいけない」「人生は人、本、旅から学ぶ」といった出口さんの言葉からは、仕事や生きることを支える言葉となって、自分を支えている。
本は、未知なる体験との出会いであり、教養を深めるのにもってこいだ。最近はスマートフォンやWebで集められる情報で満足してしまいがちな自分がいるのだが、本を読むたびにその考え方を改めざるを得ない。
本を読むことは自分と深く対話をすることと同義である。本を読むことで深くその世界に入り込み、「自分だったらこう考える」といった内なる思考と向き合うことができる。
そんな本の「使い方」が本著のテーマである。例のごとく、響いた言葉を引用として取り上げ、感想を述べてみたい。
ココ・シャネルと花森安治は教養をこう考える
「私のように、年老いた、教育を受けていない、孤児院で育った無学な女でも、まだ1日にひとつぐらい花の名前を新しく覚えることはできる」
本で学ぶことの楽しさ、有益さが書かれた箇所。前者はココ・シャネルの言葉。教養を1つ手に入れることで、1つ知らなかったことを知る。それが複雑な世界を簡単に解きほぐしていくことだとする考え方だ。
『花森安治伝 日本の暮しをかえた男』(津野海太郎・著 新潮社)は、「企業に騙されない人たちを増やしていこう」との思いで『暮しの手帖』を創刊させた花森安治の評伝です
教養を手に入れると、視野が広がり、さまざまなことをより客観的に判断ができるようになる。暮しの手帖には、教養や知識を与えることで民度の底上げを狙った本だったのかと思うと、読み方が変わる。
出口治明流、専門知識を最高最速で身につける方法
①関連書籍を「7~8冊」手に入れる ②「厚くて、難解そうな本」から読み始めて、輪郭をつかむ ③最後に「薄い入門書」を読んで、体系化する ④本で学んだあとは、実際に体験してみる
出口治明さんはまるで本文と対話をするかのように、一字一句もらさずしっかりと熟読する。速読とはまったく逆のアプローチで、1冊の本を読み進めていく。その中で新しい分野のことを習得する手法として挙げているのが、こちらの引用箇所だ。
1冊じっくり本を読み込み、それを同一分野で数冊繰り返す。まずは難しい本で輪郭を掴み、入門書で知識を体系化するアプローチというのは、取り入れてみたいと感じた。難しくて読み進めるのに根気がいる書籍でも、複数冊を通じて1つのトピックを理解するものと考えると、少々気が楽になる。
エリートも、スーパーマンも、みんなちょぼちょぼ
「人間はちょぼちょぼで、それほど賢くない」
上司の前では「仰せの通りです」と指示に従うふりをしておきながら、実際は、裏で足を引っ張るような人が現実世界には山ほどいます。それが人間社会の実相です。
出口治明さんの書籍やウェブ記事でたびたび語られている言葉である。人間は万能でもなんでもなくて、ちょぼちょぼ。たびたび失敗をするし、易きに流れるものである。こういった人間の本質を知った上で本を読むことが、人間がからむ複雑なトピックを理解することにつながりそうだ。
人間がちょぼちょぼであることを前提とした上で、現実世界を見てみると、「なぜこの人はこんな理不尽なことをするのだろう?」と思い悩むこともなくなるのかもしれない。なんてことを思いながら本書を読み込んだ。
私はハムレットとドン・キホーテの中間型タイプかもしれない
・ハムレット型………ああでもない、こうでもないと悩み続けるタイプ ・ドン・キホーテ型……夢や自分の妄想に向かって、猪突猛進していくタイプ ・ドン・ファン型……ひたすら異性を追い求めていくタイプ
自分が本を読む理由として、「人を学ぶ」というお題目がある。マーケティングとは人を動かして市場を作っていくことなので、人を動かすことが仕事で一番重要な部分になる。この類型は、人間の本質を知るのにかなりよさそうな分類だ。
先を読むよりも、今を精一杯生きる
未来を読むことは誰にもできません。世の中は常に変わっていきます。だとすれば、人より1歩先を読もうなどというムダな努力は捨て、川の流れに身を任せて、日々、与えられたことをきちんとやって生きていくのが私の好きな生き方
未来を予測するのは楽しいかもしれないけど、未来を予測したところで自分の毎日の生活は変わらない。毎日を新しいものとして淡々と生きていくというのが個人的なスタンスだったので、何だか救われたような気がした言葉。
反省、私は人の話が聞けていない
相手の思考のプロセスや思考のパターンを、話をよく聞いて認識しろ。それができなければ、人の話を聞いているとは言えない」
これはガツーンとやられた。自分は話を真の意味で聞けていない……。話を聞くことはとても難しいと思っている。的を射ない話はついさえぎってしまいがちになるし、「自分が話したい」という気持ちの方が勝ってしまう時がある。
当然コミュニケーションは会話のキャッチボールで成り立つものだから、相手の話をしっかりと受け止めることが肝要である。でもそれでは足りていないというのが出口治明さんの指摘である。思考のプロセスやパターンまでを認識してナンボであるという指摘はうなずける。早速日々のコミュニケーションで意識して直していきたいと感じた。
匿名情報の優先順位を下げ、振り回されないようにする
匿名の情報は一般的には当てにしないほうがいいと思います。
これは自分の中でも金言にとして使い続けたい。特にWebのマーケティングやコンテンツ企画を仕事にしていると、匿名のコメントやご意見をよくいただくのだが、匿名の情報についてはあてにする優先順位を下げよう。
人はいつ、どの時代でもそんなに変わらないという真理
韓非子にはさまざまなタイプの人物が登場してきますから、何よりも「人間を知る」ことができます。「世の中には、腹黒い人も、寛大な人も、冷たい人も、温かい人もいる。それはどの時代でも変わらない」と実感できるはずです。企業に入ると本当にさまざまな人に出会います。『韓非子』を読んで免疫をつけておきましょう。
まがりなりにも齢を経るにつれ、だんだんと直面する仕事、人生の問題が複雑化する。歳を重ねて知らないことが減り、目の前の物事はだんだんシンプルになっていくはずなのに、現実はそうでもない。一方で、その複雑さをもたらしているものの根本は「人」なのだと思う。だからこそ、知らないことがなくなるにつれ、人間のことをもっと知りたくなる。