事業会社マーケターのさんぽ道

事業会社のマーケッターがメディアやブランディングについて寄り道散歩。

誰のため、何のため

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2011年6月26日(日)。

「人を幸せにする、よりよい社会にする。そう思えばやる気は湧いてくる」

ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイ 前澤友作社長のインタビューが、日経新聞2011年6月26日朝刊に掲載されていました。ちょっと気になったので、抜き書きメモ。

これまでの事業を通じて僕が感じることは、仕事は結局、誰かを幸せにするためにやっているものだということ。

人のために働くのは最強のモチベーションです。ですから、自分自身のスキルアップにしか興味がない人とは、僕は一緒に働きたくありません。

これはとても共感できます。最初の会社の3年目のことだったかな。自分のスキルアップを第一に考えて半期を働いたことがありました。半年に1度の個人評価の目標を高めに設定し、それを達成することばかりを考え、仕事に打ち込んでいたのです。

結果として高評価をいただけたのですが、1つの目標を達成したことで安堵したせいか、次の半期が自分の中であまり振るわなかったのです。個人の力を上げることに注力した結果、スキルは向上したものの、仕事に対して思いを持つ感覚が鈍くなっていることに気付きました。誰のために、何のために仕事をするのかという根本の部分がなくなってしまうと、達成感や充実感は得られず、無常感だけが残ってしまうことにその時気付きました。

「何のために働くか」という理由が自分の中でしっかり納得できていれば、「仕事の中でこれはやりたくない」なんて、より好みはしないものです。どんなことでも、目的のために進んでできるようになると思います。

忘れていたのは、サービスを届けるユーザーに対する思い、資金を捻出してくれるパートナー企業とともに成長していくという考え方でした。それが達成できてこそ、自分自身が成長した、スキルアップしたと胸を張って言えるようになるのでしょう。

最初の仕事を選んだ理由は「自分自身の周囲にいる人が、情報による気付きやきっかけを通じて変化する瞬間を作りたい」というものでした。「私が過去に書いた文章によって、知人が変化することを選んでくれた」ことが原体験です。「社会を変えたい」という大言壮語は自分自身にとって現実味を感じられなかった。それよりも、自分の周囲の人が笑って幸せに暮らすために、何かしらの価値を発揮したいと考えるタイプでした。

今の自分を客観的に振り返ってみても、その思いが不変であることに驚きます。人間、芯の部分はそう簡単には変わらないのでしょう。ただ実際に働くことを通じて、思いの対象や目的は変わっていって当然だと思います。

今の私は、「インターネットを活用するあらゆる人が、ネットのサービスや仕組みを通じてよりよい仕事や生活ができるようにすること」に対して思いを馳せています。両親や知人には、まだまだインターネットを使いこなせていない人がたくさんいる。そうした人たちに対して気付きや変化のきっかけを作ることができれば、これほど仕事冥利に尽きることはありません。「そのための仕事がしたい」。今なら胸をはってこう言うことができます。

先人の知恵や教訓は、自分の今を相対化して客観的にとらえることができます。生き方のスコープも、これまでの経験を通じて徐々に広がっていることが分かります。もしかしたら人は、この感覚を成長と呼ぶのかもしれません。