事業会社マーケターのさんぽ道

事業会社のマーケッターがメディアやブランディングについて寄り道散歩。

Webデザイン受発注のセオリー

Webデザイン受発注のセオリー

今の仕事の一角を占めているのが、ランディングページの作成だ。クラスタの異なる消費者に向けてランディングページを複数作り、サービスがもたらす価値を訴求し、新規登録をしてもらうことが狙いだ。ランディングページを見て、「課題が解決できる」とイメージを持ってもらい、サービスのファンになってもらうためには、作り手側でランディングページの綿密なストーリーを描かなければならない。ランディングページのすべてはそこから始まるといっても過言ではない。

ストーリーを基にイメージを作った後には、デザインと向き合う必要がある。ランディングページを構成する一番の要素は、デザインだ。リスティング広告や検索で訪れたユーザーに、サービスの価値を伝える。ユーザーの多くはランディングページに来た瞬間に、そのページの内容が自分に関係するかどうかを判断する。関係がないと分かれば、すぐに直帰・離脱してしまうというシビアな世界だ。そこでWebデザインは、ユーザーの潜在ニーズやイメージに訴えかけ、動かすための大切な要素となる。

自分はWeb担当者なので、デザインの詳細は分からない。ランディングページは、社内のデザイナーやWeb制作会社に委託する。ランディングページで表現したい世界観や伝えたいメッセージをビジュアルデザインにどう落とし込んでいくか、苦悩することも多い。発注側と受注側のコミュニケーションがきちんとできていないと、理想とするランディングページは完成しない。それどころか、出戻りが発生して無駄な工数が掛かり、受発注側の双方が疲弊してしまう。お互いがうまく情報を伝達しあい、ユーザーの課題を解決する制作物を作れるようになりたいと考えていた。

前置きが長くなったが、こういった課題意識を持って参加したのが、『Webデザイン受発注のコミュニケーション実務 ワークショップ』だ。上記のような課題を感じていた時に出会った「Webデザイン受発注のセオリー デザインコントロールが身につく本」という書籍で、デザイン発注の心構えや実際の進め方を学ぶことができた。今回はワークショップを通じて、書籍で得たインプットをアウトプットに変換していけると思い、参加した。

発注側の心得として、まずは受発注側の考え方に深い溝があることを理解した上で、コミュニケーションをする必要があるという点が理解できた。発注側はプロジェクトを社内でさんざん議論しているが、受注側はプロジェクトの背景や意図を知らない。そこをきちんと文章で説明し、理解し合える共通項を共有することで、Web制作が滞りなく進む。この部分をきちんと共有しておかないと、センスや感覚に依ったデザインができあがってしまう。これは経験則からも膝を打つ内容だった。

次に、発注側は何のためにプロジェクトを立ち上げるかを考え、目的を文章化し、ゴールをKPIに落とし込んでいく必要がある。1度の打ち合わせでこれを相手に伝えることは難しい。箇条書きで構わないので、プロジェクトの要諦(ビジョンステートメント)を作ることが重要だ。これにより、受注側はその目的を達成するためのデザインを作りやすくなる。ここは見逃されがちだが、とても大事な箇所だ。

そして、ビジュアルデザインにはできることとできないことがあることをふまえておく。デザインができるのは「ほかとの差別化」「感情への訴求」「機能性を高める」ことの3つである。プロジェクトの目的達成に必要なのは、もしかしたらWebデザインの変更ではないのかもしれない、という前提を踏まえておくことで、無理にデザインで課題を解決しようという姿勢を保持し続けなくてもいいことが分かる。このあたり、発注側として特に理解しておきたいポイントだ。

ワークショップでは、発注側としての意識を持ちながら、「ビジョンステートメント」と「カラースケール」の決定に挑戦してみた。発注側の発言から、その裏にある意図や真の目的を見いだし、デザインを形作っていく。受注側はこういったプロセスでデザインをしていることが理解できた。発注する際には、やはりプロジェクトの目的や狙いを文章化し、余すところなく伝えることが、成功の鉄則だ。

今のランディングページ制作の過程で足りない部分は、文章化と背景の伝達にある。早速実践を通じて、正しいデザインコントロールができるようになっていきたい。Webやデザインの専門家ではない発注側は、デザインをセンスという言葉で片付けてはならない。少なくとも発注側は専門外だからとあぐらをかかず、受発注者の間にある溝に架橋し、ユーザーの課題を解決できるデザインや制作物を作っていくための指揮をしていく必要がある。