事業会社マーケターのさんぽ道

事業会社のマーケッターがメディアやブランディングについて寄り道散歩。

「メディアの読み方」研修でこれだけは伝えたかった3つのこと

2014年の新入社員向け社内研修を担当させていただいた。テーマは「メディアの読み方」。研修のチューターである2年目の方が、元々メディアで仕事をしており、今はマーケティングの観点でメディアを活用している自分に白羽の矢を立ててくれた形だ。

社内で必要とされるのはうれしいことなので、即断でOK。改めて「メディアの読み方」を考えてみると、まあこれが難しい。テーマを広げようと思えばいくらでも広げられるのだが、30分の講義形式なのでテーマは絞っていこうと思った。

ターゲットはまだ働き始めて1カ月前後の新入社員。テクニカルなことよりも、メディアと触れる際に必要となる基本的な考え方を体得してもらう方が良いのではないかと考えた。結果、「目的を持ってメディアに接すること」「メディアを疑うこと」「メディアを活用するマーケッターの視点に触れること」の3つに絞って伝えようと考えた。 

目的を持ってメディアに接すること

 まずはメディアに接する際には目的を持とうよ、という話。今は無料で、簡単に、多種多様の情報を手に入れられるようになった。わざわざ雑誌や新聞の定期購読をしなくても、iPhoneAndroid端末を持っていれば、すぐにニュースサイトにアクセスしたりキュレーションアプリを使ったりして情報を仕入れられる。情報に接するのは本当に簡単になった。 

一方で、情報収集をしているだけで時間を浪費してしまう場面もよくある。情報収集それ自体が目的となり、悪い習慣になってしまうということだ。情報は目的ありきで収集すべきものであり、目的がない状態でたくさんの情報に触れても、それは自分の血肉にはならない。

◯◯のために情報を仕入れるんだ、という目的が自分の中にあれば、それを軸にした情報収集はとても効果的なものになる。目的を達成するための「手段」としての情報収集に勤しんでもらいたいということを最初に伝えた。

メディアを疑うこと

 目的を持ってメディアを読もうとする考えができた次は、「メディアを疑うこと」を進めたい。同じ事実も、報じるメディアや記者によって伝える切り口は異なる。そのメディアの存立理由や読み手の嗜好によって、記事の作り方は異なってくる。

最近では、ブログやWebサービスに記された記事コンテンツも、メディアが報じる記事と同列で読者のもとに届くようになりつつある。事実はどこにあるのか、なぜこのメディアがこの記事を出しているのか、といったことを常に考え、メディアを疑う姿勢を持っておくと、より実りのある情報収集につながる。

メディアを活用するマーケッターの視点

 読者として目的を持ち、疑いながらメディアを読めるようになったら、最後はメディアを活用して読者に情報を届けようとするマーケッターの思考も知っておいてもらおうと思った。自分が所属する部署の仕事の根幹にあるのが、マーケティングコミュニケーションだからだ。

 マーケティングコミュニケーションを一言で表すならば「好きな人に好きって伝えて、気持ちを動かすこと」だと思っている。それは直接伝えるでもいいし、共通の知人に伝えてもらうでもいい、ソーシャルメディアやLINEを使ってもいいし、直接合って言葉にしてもいい。人に気持ちを伝える時には、さまざま媒体を使う。これをマーケティングコミュニケーションとメディアになぞらえてみた。

 広告、口コミや戦略PR、ソーシャルメディア・ダイレクト・マーケティング、イベントなど、その手段はとても多い。そしてこれらのすべてが、マーケッターにとって広義のメディアだ。そんな話をして30分の研修を終えた。

感想

 新入社員の何人かには「面白かった」と言ってもらえたので、まずは成功ではないか。営業・マーケティング志望じゃない人にとっても基本的な考え方が得られるような研修内容にしてみた。

 人に教えるということは、まず自分がきちんと理解していないと話にならない。研修資料を作りながらマーケティングコミュニケーションについてもう一度自分の中で理解を深められたのはよい経験だった。

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