事業会社マーケターのさんぽ道

事業会社のマーケッターがメディアやブランディングについて寄り道散歩。

Webライターと編集者の境目は? コンテンツに情報以上の価値を込めるには? Webライターズミーティングで考えた

Webライターズミーティング Vol.2が終了しました。ライフハッカー[日本版] 副編集長の長谷川さん、プレスラボ代表取締役の梅田さん、サムライト 編集長の後藤さんとともに、Webライティングに関するノウハウや考え方を伝える場となりました。来場者は30人くらい。私はモデレーターとして参加させていただき、Webでライティングをすることについて個人的にもヒントが得られたイベントだったと実感しています。

登壇者は全員「編集者」でありながら、自らライティングもする人たち。昔はライターと編集者の役割はくっきりと分かれていたのかもしれませんが、Webを主戦場としてコンテンツの仕事をするならば、ライターと編集者の両方の素養を持つことは強い武器になります。当日盛り上がったトピックを題材に、個人の気づきを振り返ってみます。

fzm.hatenablog.com

ライフハッカーで取材いただき、記事になったよ

www.lifehacker.jp

来場者の方に執筆いただいたブログ↓

yriica.com

somewrite.com

流行のパンケーキ、あなたならその魅力を伝える? 流行の裏側について考える?

トピックの1つに「編集者とライターの役割」というものがあり、この役割の境目がだんだんとなくなっていくという指摘がありました。ライターと編集者はいわば戦友であり、パートナーである。これはライティングをしている人の共通認識かなと思います。伝えたいことがあるライターの思いを、より多くの人にとって伝わるように編集する、それが編集者の役割ではないかと感じるところです。

ただその役割を言語化するのは難しい。「ライターと編集者に向いているのはどんな人か?」という会場からの質問に対して、ライフハッカー 長谷川さんの回答が興味深かったです。

いわく「流行のパンケーキがある、食べに行ってすぐにその魅力を自分の手で伝えたいと思う人はライター向き、なぜパンケーキが流行しているのか? と思考をめぐらせてしまう人は編集者向き」という趣旨でした。これはなるほど、という感じ。

その魅力を自分の言葉で発したいとまず考える人はライター気質、その魅力はどこから来ているのかを考える人は編集者気質。これは自分がどちらの気質寄りなのかを判定するために的を射ていると感じましたし、自分は圧倒的に後者です。

モデレーターながら「強烈に書きたいことがある、伝えたいことがある人はライター向き」と回答した自分の意見を、より分かりやすく換言してくれた感じがありました。

メディアのコンセプトをしっかりと相互理解し合えるか

「編集者がライターに求める役割」というトピックで「メディアコンセプトを理解してもらえるか」という指摘があり、これはうんうんと納得してしまいました。

これだけ情報があふれかえる中、単純に新しい情報や切り口を変えた企画を記事にすることは、少し経験を積めば段々とできるようになってきます。裏を返せば「情報を伝えるコンテンツ」だけで勝負しても、なかなかほかのコンテンツと差別化はできないということ。

そこで自分が常に考えるのがメディアの文脈(コンテキスト)です。なぜこのメディアにこのコンテンツを掲載する意義があるのか、メディアとしてなぜこのコンテンツを出すのか? という文脈がないと、読み手に情報以上の価値を持ち帰ってもらうことはできないと感じています。

コンテンツにそのメディアの文脈をどれだけ込められるか。コンテンツを企画する時に自分が一番頭を悩ませるポイントです。ほかのメディアでも作れる、掲載できるコンテンツならば、それを手塩にかけて作る意味は薄まってしまいます。

「メディアはメッセージである」と説いたマクルーハンの言葉を借りれば、コンテンツが載るメディアそのものが受け手に対してメッセージを伝えるもの。ではそれが何なのかを突き詰め、その文脈を自然と入れ込んだ記事を作ることが、結果として情報としてのコンテンツの価値を高めるものだと思っています。

「伝える」を「伝わる」に変えるための基礎の基礎は「記者ハンドブック」で培う

「伝える」を「伝わる」コンテンツに変換するのは、編集者が一番頭を悩ませるところでしょう。ただ「伝わる」コンテンツの編集を加える以前に、伝えるコンテンツとして最低減の文章力や語彙がないと、「伝わる」コンテンツにするのは難しい。

そんなことを考えていたところ、イベントの最後の方で「記者ハンドブック」の話が出てきて、思わずにやりとしてしまいました。

記者ハンドブック 第12版 新聞用字用語集

記者ハンドブック 第12版 新聞用字用語集

私が編集記者をしていたころ、一番お世話になったのがこの「記者ハンドブック」です。文字を通じて伝える仕事をするのであれば、言葉の基本作法を知るのは前提であるべき。どう表現すべきか迷った言葉はすぐにチェック。これを繰り返すだけで、少なくとも文字の表現の幅は広がっていきます。

ただ言葉は時代によって常に変化するもので、私がよく見ていた第10版と最新の12版では違うところもあります。例えば「私」は昔は開いて「わたし」と表現するものでしたが、今は「私」と閉じた書き方をしてもOKになっているなど。言葉を扱う仕事をするなら、基礎の力は不可欠ですよね。

伝わる文章を作るために読むべき4つの本(by 長谷川さん)

伝わる文章を作るために読むべき本として、ライフハッカー[日本版]の長谷川さんが挙げられていた本を列挙しておきます。「伝える」文章の基礎力を磨くのに良さそうですね。

コミュニケーション技術―実用的文章の書き方 (中公新書)

コミュニケーション技術―実用的文章の書き方 (中公新書)

伝わっているか? 宣伝会議

伝わっているか? 宣伝会議

プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術

プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術

個人的によく読んでいた「文章の書き方本」

イベントとは関係ありませんが、私が記者時代によく参考にしていた本はこちらです。文章の書き方の基礎は、すべてこれらの本で学びました。

日本語の作文技術 (朝日文庫)

日本語の作文技術 (朝日文庫)

理科系の作文技術 (中公新書 (624))

理科系の作文技術 (中公新書 (624))

後は新聞で気になった記事を毎日タイピングするというのもやっていました。今もEvernoteには当時写経していた新聞記事が残っていて懐かしいです。

第3回Webライターズミーティング、やりますか?

今回はWebライターに携わっている人に参加者を絞ったおかげで、イベント自体もテーマをぶらすことなく終えられたと思います。「第3回もぜひ開催を!」というリクエストを幾つかいただきましたので、なんとか実施できればと感じるところです。

ワークショップなんかいいかもしれませんね、ライターと編集者が同じ机に座って、1つのコンテンツを作り上げていく。ライターと編集者の思考の見せ合いの場ができれば、きっとお互いの立場や考え方がよく分かって、よりコンテンツを深めることができそうです。リクエストありましたら、ぜひお知らせください。

第1回目Webライターズミーティングの様子はこちら

fzm.hatenablog.com