事業会社マーケターのさんぽ道

事業会社のマーケッターがメディアやブランディングについて寄り道散歩。

MT東京で3年間の自社メディア運営をすべて話して考えた「企業をメディア化すること」の真意

2015年4月19日(日)、Movable Typeのユーザーイベント「MT東京」にお呼ばれして、サイボウズ式のオウンドメディア展開についてお話をしてきました。

mt-tokyo.doorkeeper.jp

サイボウズ式はコンテンツを更新するCMSとして「Movable Type」を使っていて、今回はそこからお声がけをいただきました。

www.sixapart.jp

自社メディアを運営して3年、愚直に継続することが不可欠と知る

サイボウズ式は2012年5月にローンチし、今年の5月で丸3年の運用になります。今でこそ「企業の自社メディアによる情報発信」の一例としてさまざまなイベントでお声がけいただくことが増えましたが、「最近になってようやく軌道に乗り出したな」というのが率直な実感です。

オウンドメディアは開始してすぐに成果が出るわけではないところが、これまでのWebマーケティングとは異なるところです。私自身、毎日Webのコンテンツをシャワーのように浴び続けているわけですが、そこから何かしらのサービスや製品を購入するという経験はほとんどありません。有益な情報が購買に即結びつくというのは、よっぽどのことがない限りないと言えます。

ただ、何かを購入したい、検討したいと思った時に「そういえば、あの情報があったな」とか「あのサイトでこういった情報が出ていたな」ということはうっすらと覚えています。そして、そのわずかな記憶を頼りにWebやスマートフォンを使って「能動的に調べてみる」。その情報にたどり着くこともあれば、たどり着かないこともある、そんなもんです。たどり着ければラッキー、くらいの感じです。

ただ、このように「そういえばあのサイトにあんな情報があったな」というイメージ・感覚の有無というのは、とても大事だと思います。そのイメージがなければ、少なくともサイトにたどり着いてもらうことは永久にありえないのですから。そして、こうやって思い出してもらうためには、長く、何度も、コンテンツを通じてコミュニケーションの接点を持っておく必要があるわけです。

オウンドメディアは、そこに効いてくる施策だと思っています。すぐに売り上げにつながるわけではないけれど、コンテンツを出し続けることで、生活者の頭の中にブランドが徐々に構築されていく。その積み重ねが、ある日突然花開く瞬間が訪れるというわけです。

流行に踊らされないこと、「なぜやるのか?」を考えぬく重要性

マーケティングの分野ではいわゆるバズワードと呼ぶような、流行のトピックが定期的に生まれては消え、消えては生まれ、を繰り返します。これに踊らされるようではいかん、というのが自社メディアを運営する上での立ち位置です。

「オウンドメディア」という言葉の聞こえはいいですが、やっていることはメディアやコンテンツを通じた生活者との接点作り、すなわちコミュニケーションをすることです。それ以外の何物でもありませんし、それ以上でもそれ以下でもないと感じるところです。

だからこそ、真摯にユーザーにとって価値のあるメディアを運営し続けることしかできませんし、仮にオウンドメディアというブームが終わったとしても、コンテンツやメディアを通じたコミュニケーションを愚直に続けるというやり方は、長い目で見ると必要なことだと思っています。

オウンドメディアというツール自体は変わってもOK、むしろその時代に応じて変わっていくでしょう。だからこそ、そのツールを使って達成すべき目的にしっかりと照準を合わせて、淡々と運営していきたいという思いが強いです。

メディア運営を通じて、企業をメディア化していくという姿勢

「企業がメディアを作る」のは簡単です。一方で「企業がメディア化する」というのは、そんなに簡単にできることではありません。その企業のコミュニケーションの姿勢そのものが強烈に問われるからです。

間違いなく「自分たちが伝えたいことではなく、生活者が求めていることを把握し、その情報を届ける」という考え方の変化を迫られますし、それを継続できるよう、社内に専門のチーム(編集部と言い切ってしまうくらいがミッションが分かりやすくてよい)を作ることも必要になってくるわけです。

チームの思考の転換やチーム作りにまできちんと踏み込めるか。それが求められていることは言うまでもありませんし、社外のリソースに外注するといった対処療法的な取り組みでは、その真意を果たすことの難易度は跳ね上がります。さながら「インハウスの編集部を作る」といった意気込みで、マーケティングコミュニケーションを率いていく必要があるとさえ感じます。

「企業メディアを作る」ことから少し離れて、「企業をメディア化する」ことの真意を考え、実行していくフェーズに移りつつあることを、話しながら実感したセミナーだったのでした。

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