事業会社マーケターのさんぽ道

事業会社のマーケッターがメディアやブランディングについて寄り道散歩。

マーケティング担当者は文章力よりも企画力を高めるべき? サイボウズ式勉強会に学ぶ

サイボウズ式プレゼンツ「企業のオウンドメディア勉強会」に参加。日経BPの柳瀬博一さん、東洋経済オンラインの佐々木紀彦さんの第一部セッション「メディアと企業コミュニケーションの新しい形とは」の内容が、企業のマーケティング担当者にはとても示唆に富んだ内容だったので、その内容を振り返ってみる。ポイントはマーケティング環境が劇的に変化する中で、企業のWeb・マーケティング担当者には一層の企画力が求められるということだ。

バナーはクリックしない、面白ければ広告でもOK

Webメディアの最前線で仕事をしているお二方の共通認識である。確かに自分でもバナーはクリックしないし、無意識的に視界には入らないようになっている。スマートフォンのバナーは視界にこそ入るが、クリックしたいと思ったことはない。ありもののWebページをバナー経由で見せたとしても、ユーザー側のインサイトを鋭く突くようなクリエイティブでないと、目にも止まらないはずだ。

 

一方で、バナー以外の広告は「面白ければ読んでくれる」という形になりつつある。思わずクリックしたくなるような広告コンテンツはソーシャルメディア上にいっぱい流れてくるし、自分もそれをクリックして消費することは少なくない。面白ければ広告だと邪険にすることもないし、ほかの人に口コミをしたくもなる。考えに考え抜かれた広告コンテンツだけが選ばれる時代になっているのだろう。

「アフリカ」と検索すると…… 

「アフリカ」と検索すると検索結果の1ページ目に出てくるのが「池上彰と歩く「アフリカビジネス」「新参者」ニッポンにチャンス!」というページだ。実はこのページ、日経BP企画による広告コンテンツである。ただし、池上彰さんがアフリカを現地取材した折り紙付きの企画であり、単純に面白い。これならクリックした後に「広告か……」と落胆することもない。

 

このレベルまで高められた広告コンテンツは、ユーザーにとって邪魔なものではなく、有益なものだ。今後はこういった企画力がふんだんに織り込まれた広告コンテンツがもっと受け入れられるようになってくるはずだ。

マーケ担当者が培うべきは企画力。文章力ではない

この話の流れから企業のマーケ担当者が考えるべきは、どうやって広告を最適化するかではなく、どうすれば面白いコンテンツを作り、ユーザーに届けるかという視点だ。潤沢な広告をマスに向けて展開するのではなく、「面白い」と思って何かしらの行動をしてくれるユーザーに向けて、お面白いコンテンツを作っていくことが何より大事になってくる。

 

ここで担当者の多くは「文章力がない」と途方に暮れがちになる。だが、東洋経済オンラインの佐々木紀彦編集長いわく「大切なのは文章力よりも、面白いものを見抜く能力」。これはマーケ担当者の自分もうなづくところで、文章力はあるにこしたことはないが、それが絶対にないといけないというものではない。

 

少々素人っぽく見える文章の方が読み手の共感を集めることがあるし、それ以前にそのコンテンツに面白さを含ませる企画力がないと、コンテンツは届かない。文章の巧拙を議論する時間は、企画力を研ぎ澄ます時間に変えてしまった方がいいというわけだ。

Webはコピーライティングである

「Webはコピーライティングであり、広告能力はコピーライトで変わる。短いセンテンスでメッセージを伝えられないと、ユーザーは面白がってくれない」。こういった趣旨の発言もあった。これも頷くところ多しだ。どれだけ良い文章を書いても、それが読まれなければ意味がないし、読み進める動機を作ることができなければ、読者はコンテンツを味わってくれない。

 

自分もコンテンツを作る時は、そこを強く意識している。見出しと小見出しを見て読者がどれだけ記事を読み進めたいと思うか、記事の内容だけでなく、ユーザーインタフェースやデザインが読み進めやすいものに最適化されているか。こういったことを常に考えている。マーケティング担当者には、良いコンテンツを作るために、文章だけでなく、見せ方やデザインまでを考える力が求められている。

最後に

企業のマーケティング担当者は、文章力よりも読み手が面白いと思うコンテンツの企画力を高めていく必要がある。広告出稿担当者ではなく、オーガニックにコンテンツを作っていける編集者のような力が、今後はよりいっそう求められてくるのだと感じた。

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