事業会社マーケターのさんぽ道

事業会社のマーケッターがメディアやブランディングについて寄り道散歩。

「佐藤可士和の超整理術」に学ぶ思考と整理の関係

佐藤可士和の超整理術

整理整頓が大好きである。断捨離が大好きである。シンプルが大好きである。

人間は物事を同時に進めることはできない。思考はいろんな方向に働かせることはできるが、実際に手を動かしている時はシングルタスクを完遂させて、次のタスクに着手するしかない。では取り掛かっているタスクを早く処理し、アウトプットの価値を最大化するにはどうすればいいか。アウトプットの前提にある思考の拡散を防ぐことだと思う。

四方八方に思考の対象が散っている場合、集中して仕事をすることができない。集中して思考するには、雑念を取り払う必要がある。その際に効力を発揮するのが整理整頓だ。ばらばらな思考を整理して、秩序立てて説明し、いらないものは思い切って捨てて、シンプルにする。これにより、驚くほど思考が冴える。

これは情報だけにとどまらない。部屋や机の上が散らかっていると、それらに気が散ってしまい、思考を妨げる。部屋や机の上をきれいにして、カバンに入れる物も常にシンプルに保っておく。何かする際に迷うことがなくなり、行動が早くなる。これに伴いアウトプットも最大化できる。

こんなことをぼんやりと考えている時に出会った書籍が『佐藤可士和の超整理術』である。佐藤可士和というクリエイティブディレクターが成し遂げてきた仕事と「整理」が、切っても切れない関係にあることが記されている。

佐藤可士和さんによると、この世界はとても複雑であることを強く理解している。また広告は「誰も見てくれないもの」という前提に立ち、ゼロベースでコミュニケーションデザインという仕事に就いている。複雑な情報を整理し、優先順位を付けて提示する。伝えたいことと伝わることを線引きし、シンプルなクリエイティブに昇華させることを心掛けているように思えた。

伝えることのスペシャリストが「空間」「情報」「思考」という3つの視点で、絶えず整理を続けている。これが論理思考と室の高いアウトプットを導き出していることがおもしろい。「できる人は整理上手」なのだろう。本書を読んで、ますます整理整頓、断捨離に磨きを掛け、シンプルな生活を続けていきたくなった。

同時に、シンプルであることの裏側には徹底した整理と思考が潜んでいることを痛感した。シンプルに見えるもののすべては、細部まで考え抜かれた上でそのシンプルさが担保されているのであろう。考えることと整理することは等価であるとさえ思う。『佐藤可士和の超整理術』からは、アイデアを形にする仕事をする人が学ぶべき所作が読み取れる。